手打ち蕎麦の打ち方

2009.10.11
(参考かないまる)


★ 蕎麦打ちのポイント6ヶ条 

生粉打ちで打ちましょう
水練りで打ちましょう
グラムで打ちましょう
良いそば粉を使いましょう
専用の道具を使いましょう
軟水で打ちましょう

● ありあわせの道具でもそばは打てますが・・・

捏鉢        ステンレスボール         
のし台   テーブルに薄いベニヤ板を敷く 
麺棒  塩ビ管もしくは既成の丸棒(ホームセンターから調達)
蕎麦切包丁              菜切包丁  
小間板    菓子折のフタかビデオテープのケース

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● 専用の道具があればらくに楽しく打てます

★ 道具選びのポイント

● こね鉢

きるだけ大きいほうが水廻しがらくにでき、重いほうが安定する。

(材質)

樹脂製 低兼、軽重あり
木製  高価、重い
陶器  重い

(大きさ)

粉300g(約3人前) 直径36cm
粉500g(約5人前) 直径45cm


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● のし板

ゲタ付は床置き作業向
平板は机上での作業向
できるだけ面積の広いほうが作業がし易い
軽いと持ち運びがらく。

(材質)

シナ合板 低兼・軽い
桐    高価・軽い
桧  高価・香り良し・軽い

(大きさ)

粉300g(約3人前) 60×60cm
粉500g(約5人前) 90×70cm

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● 麺棒

ゆがみが少なく滑りの良いものが使いやすい

(長さ、太さ)

粉300g(約3人前) 60cm/30mm
粉500g(約3人前) 90cm/30mm

● 蕎麦切包丁

重心が包丁の中心にあると切り易い
包丁の重みを利用するとらくに切れるので、ある程度重いほうがよい
折りたたんだ生地の幅以上の刃幅が必要

(材質)

ステンレス  低兼
打ち刃物   高価、重い

(刃幅)

初心者は24cm位有れば良いと思います
慣れてきたら尺一(約330mm)や尺二(約360mm)の物が長い蕎麦が切れます

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● 小間板

切り口の幅は折りたたんだ蕎麦の麺長幅の長さ以上があればよい。

(幅) 30cm前後

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● まな板 (のし板の上でも切れます)

木製のほうが切り易く、プラスチック製は切りづらい
少し包丁がくい込むぐらいが良い
滑り止めがあると安定する

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● 計量器 グラム単位で計れる デジタル秤

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★ 蕎麦の打ち方 「生粉打ち10割蕎麦」
 
 ※ 加水率は蕎麦粉にもよりますが生粉打ちの場合平均50%前後です。
   ここでの蕎麦粉は 高山製粉の「白樺」で説明しています。 
 ↑クリック高山製粉のHPへ

※補足 蕎麦打ちに使う水は低硬度(40以下)の軟水で打ちましょう。

● 手順

1 蕎麦粉、水の計量
2 水廻し(分散加水)
3 水廻し(くくり加水)
4 菊ねりとへそだし
5 丸のし
6 角だし
7 仕上げのしとたたみ
8 切り

● 蕎麦粉、水の計量

デジタル秤で蕎麦粉(白樺)、水を正確に計る 50%での例 蕎麦粉 200g 水 100g
水はCCではなく必ずグラムで正確に計りましょう。水は全量の80%、10%、7%、3%と
容器に分けておきましょう。予備に2% 2gを用意しておきます。


● 水廻し(分散加水)

水回しは4回に分け加水します。1、2回は「分散加水」蕎麦粉にまんべんなく
水を行き渡せると言う作業です。第1段階はそば粉がパン粉状になるまで
水を分散させる加水です。これを「分散加水」といいます。第2段階は、
さらに加水してそば粉を集めてゆく過程です。これが「くくり加水」です。

上記方法で概ね4回の加水で蕎麦粉が玉になります。全加水量を100%として、
1回目が80%。これが分散加水です。2回目以後は10%→7%→3%と加えます。
これがくくり加水です。つまりくくり加水は基本的には三段加水となります。
特に最後の3%は、そば粉の様子を見て、調整しながら加えますので調整加水と
呼ぶこともあります。

さぁやってみましょう。まず粉をこね鉢にいれて山にしたあと、中央に軽い
くぼみを作ります。そこに80%の水をいれます。くぼみから水があふれてもかまいません。
全部一気にいれます。水をいれたら直ちにそば粉を攪拌します。指を立てて粉全体を
「の」の字状に素早く攪拌します。200グラムくらいだと「の」の字はひとつで大廻しで
大丈夫ですが、500グラム程度を打つ場合は「の」の字を描きながらさらに大きな「の」を
描きます。ようは粉にまんべんなく触り水分を分散させるのがコツです。

この攪拌ですが、初心者のうちは、加水したらとにかくガーっと攪拌することをお勧め
します。一般に初心者は手の動きが遅過ぎます。慣れてきたら、水を入れてから数秒間
まず中央部を攪拌して、水そとそば粉が混ざってドロっとした感じが見えたら攪拌範囲
を広げるようにします。このようにするとそば粉が捏ね鉢にこびりつくのが防げます。
また粘りの強いそば粉の場合に、粉が部分的に濡れすぎてびしょびしょのダマでできる
のも防止できます。また、このときけっして手のひらにそば粉をつけてはいけません。
この段階で手のひらにつくと粘りついて収拾がつかなくなります。そば粉に触れるのは
指先だけ。それもこね鉢の底を触りながら粉全体を素早く攪拌します。15〜20秒で指先に
水分の冷たさを感じなくなります。こね鉢の中には直径1〜2センチのダマがゴロゴロ
しているでしょう。続いてダマと粉を一緒に両手ですくい、こすり合わせます。一度すく
ったら2〜3回軽くこすって(揉んで)落とし、落としてはすくいます。これが約20秒。

このとき手はボールをつかむように凹状にして粉をたっぷり持ちます。そしてそば粉同士
をこすり合わせるようにするのがコツです。粉を手で崩すのではなくて、粉で粉を引っか
いて崩すのです。両手の動きも往復運動ではなく、回転運動のほうが、粉を連続的にこす
り合わせることができるので有利です。また、大きな濡れたダマを、乾いているそば粉に
こすりつけて、ダマから粉に水を分けてあげるような意識を持つようにします。ダマは
水がなくならないと崩れませんし、乾いた粉はダマから水をもらわないと濡れないから
です。この意識を持つことが成功を約束してくれます。ひとしきり分散したら、そば粉を
こね鉢の左右の中央に集めて、指先をそば粉の下に差し込んで持ち上げて、そば粉の上下
を攪拌します。天地返しですね。向こう側から手前まで数回返します。天地が返ったら、
再びそば粉を手にとって揉み合わせます。揉み合わせによる分散と天地返しは数回繰り
返します。揉み落としと天地返しを数回行うと、最も大きなダマの長さが10ミリ以下に
なってきます。揉み合わせで力をいれすぎると、ダマは細かくならないで、逆に大きく
なりますので、力のいれ加減を工夫してひたすら細かくするように作業します。

手がどれだけせっせと動いたかにもよりますが、1分半〜2分でそば粉の大半が細かい
パン粉状になり、そのなかにやや大きい粒が混在した状態になります。大切なのは、なる
べく短時間でこの状態に達することです。したがって、両手をひたすらせっせと動かし
続けて作業します。分散に2分以上かけてはいけません。ただ、いくら短時間といっても、
分散が不十分なのもまた失敗の原因になります。短時間で十分に分散させる。これが極意
ですので1分以上は分散作業は行ってください。

(ここまでで加水開始から1分30秒)

※(捕捉) 蕎麦粉が「白樺」でない場合

このコーナーでは実習用として高山製粉の白樺を指定しています。指定している理由は、
加水率とまとまり方がそば粉ごとに違うからです。でも白樺以外で打ちたいケースも多い
でしょう。そういう場合は、加水率はわかりません。そこで白樺以外では、そば粉の重量の
50%を暫定的に最適加水率として水を用意して打ち始めてください。なお、白樺では80%の
加水後、水は簡単に分散しますが、粘りのつよいそば粉では強いダマができて分散しない
場合があります。その場合は丁寧に分散するか、一回目の加水を60〜70%に落とし、残りの
水をくくり加水と考えてください。くくり加水の分割は、まず残りの水の半分、また半分、
とすればよいでしょう。


● 水廻し(くくり加水)

分散加水でできたパン粉状のそば粉は、内部が湿っていて、外側が比較的乾いた状態に
なっています。ここにさらに加水して攪拌してそば粉の表面を湿らせると、パン粉の
そば粉粒子同士がくっついて大きな固まりになります。さらに加水すると、そば粉全体
が一個の玉になります。この過程がくくり加水です。加水量は、先に分割した10%→7%→
3%の部分です。最後の3%は、様子を見ながら加水して残すことがあります。逆に足らない
場合は、調整用に用意した別の水を使います。くくり加水はそば粉をひとかたまりにする
作業ですが、最大のコツは、けっして力をいれて固めようとしないことです。「そば粉に
揺さぶりをかけて、そば粉が自ら集まるのにまかせる」これが水練り生粉打ちの極意です。
ただし、だらだらと粉に触っていると、力も入れていないし加水も不足なのに、そば粉が
玉になってしまうとがあります。このような玉は固くてひび割れやすく、これも失敗の
ひとつです。したがってくくり加水も、ポイントはテンポのよい短時間の作業です。

ではくくり加水の実際です。まず分散加水が終わった粉に、「10%」を加水します(ここでは
11ccです)。初心者はコップに水を分けておいたわけですが、慣れてきた方は、残っている
水の半分程度を加水すると考えればOKです。加水は細く糸をひくように、大きくらせんを
描いて落とします。ボウルの注ぎ口から直接落とします。要は細く糸を引くように落として
一ヵ所に水が偏らないようにします。水を落としたら再び攪拌ですが、まず捏ね鉢の両端
から指を入れて、そば粉を一旦中央に寄せます。そして左右から交互に揺すります。これで
水にそば粉が被ります。水にそば粉がかぶったら、再び指先を立てて、捏ね鉢の底面をこす
りながららせん状に動かして、ガーっと攪拌します。15〜20秒程度攪拌したら、そば粉を
中央に寄せて左右から両手ですくい、そしてこすり合わせます。くくり加水のこすり合わせ
は最初は本当にそっとやります。水を含んだそば粉のやわらかい固まりは冷たい固まりに
感じられると思いますが、これを乾いた粉とこすり合わせて崩して行くのです。

この段階では、そば粉を絶対に加圧してはいけません。そば粉に加わるのは、そば粉同士を
互いにこすり合わせるための力だけです。「絶対に加圧しない、捏ねない」。これが極意です。
もし冷たい水を含んだダマが破裂して手にべとつくとしたら、それはもう力の入れすぎです。
その水は手につけるのではなく、乾いたそば粉にあげるのです。約1分間粉をさばいて、ある
程度水分が分散して最初にあった冷たい固まりがなくなったら、「こすり合わせ」を「揉み合
わせ」に変えます。またここからは両手は平行移動になります。つまりキリを揉み込む時の
手の動きです。

(ここまでで加水開始から2分30秒)

するとそば粉はダマになってきます。さらに1分弱作業を続けると、大きめの固まりと細かい
粉状の部分が混在してきます。ダマの大きさは1〜2センチ程度でしょう。そこで大きな固ま
りを手前にかき寄せて、細かい部分を奥に残します。

(ここまでで加水開始から3分30秒)

ここで2回目のくくり加水((全体では3回目の加水) をします。つまり「7%」を加水するわけ
です。この場合8ccです。加水は粉状になっているところの部分にします。ダンゴ部分は加水
しません。粉状の部分に水を落としたら、その部分を左右から指先で交互に押すように、手早
く左右に攪拌します。すると細かい粉たちは表面がしっとりして、つぎにネバっとすると思
います。我慢してさらに攪拌するとべとつきがおさまりますので、再び両手でこすり合わせ
ます。するとそば粉は、1センチ〜ピンポン玉程度おおきさのダマになります。

(ここまでで加水開始から4分程度)

そうなったら今度は手のひらを下に向けて、捏ね鉢のなかでそば粉をゴロゴロと転がします。
すると、おおむね大きな固まりになり、多少細かい粉が残っている状態になるはずです。団子も
実はダマが水でくっついただけのものですから、まだボロボロの状態です。

(ここまでで加水開始から4分30秒程度)

この状態でだらだらとこねまわしてはいけません。硬いまままとまってしまって、菊練りで
難儀します。そば粉をごろごろ転がしながら、ただちに残りの水(3g、3cc)を落とします。
実は慣れて来ると、ここは1ccずつ落としては転がし、転がしては落としてそば粉が固まるの
を待つのがよいのです。これをそば粉との対話とよびます。しかし初めての方は加減がわから
ないはずなので、最後の3%を全部落としてしまってください。最後の加水をすると、ダマの表面
が濡れて一瞬ベトっとして、次の瞬間、ダマ同士がくっつき始めます。この瞬間を見逃さずに
丁寧に転がしながらくっつくのを助けてあげると、ダマは一つのそば玉になります。滑りの
悪い捏ね鉢では、ゴロゴロ転がしているだけでそば粉は玉になります。しかし、滑りのよい塗り
物の捏ね鉢や、ステンレスの捏ね鉢の場合はダマが滑って固まりにならないことがあります。
玉の表面が濡れて白くなっているのにまとまらない場合は、玉を手で持ち上げて、ほかのダマ
の上にかぶせるような感じで転がすとひとかたまりになります。最後の3%を加水してもひと
つの玉にまとまらなかった場合は、調整用の水の出番です。1%ずつ慎重に足しては転がしてく
ださい。そば粉が白樺で、計量が正確なら、ほどなくまとまるはずです。玉ができたらこね鉢の
内周に飛び散った粉を全部玉にくっつけながらさらに転がします。この最後の段階でそば粉や
そばダマの小粒を残しておくと、次の菊ねりの障害になりますので、念入りに玉に繰り込んで
ください。ただし手のひらから落ちたような乾燥した硬い粉は、練り込んでしまうとそば切れ
の原因になりますので、玉に繰り込まずに捨てます。玉をゴロゴロ転がしてこね鉢の内周が
きれいになったらくくり加水は終了です。

(ここまでで加水開始から約5分)

ここで一度手を洗って、手にこびりついた乾いた粉を落とします。

(捕捉)そば粉が「白樺」でない場合

そば粉が指定外の場合は、加水率を50%と想定して加水するしかありません。その場合、二回目
の加水(くくり加水の一回目)でそば粉がまとまってしまう場合があります。加水率45%のそば
粉は、ここで最適加水率に達してしまうからです。その場合は加水をそこで打ち切り、菊ねり
に移ります。また50%に達してもまとまらない場合もあります。その場合は、あと10%分の水を
もち、3%ずつ追加加水をして行きます。もちろん初回はうまく行かないかもしれませんか、上
記の白樺のケースを参考になんとかまとめてください。そして残った水の重さを測り、一回目
の加水率を計量しておきます。そして蕎麦を食べてみれば、その玉が緩すぎたか固すぎたかが
わかると思います。そうしたら次回は計量した水の量を1〜2%増減して、もう一度打ちます。
そういうことを2〜3回やるうちには、必ず最適点に達すると思います。なお、白樺を使っても、
初回はずれるかもしれません。そば粉も厳密には毎回含水率が違いますので、多少は毎回違う
からです。したがって緩かったら減らす、固かったら増やすということでやってみてください。


● 菊ねり

水廻しでくくられたそば玉は、水を含んだ小さなダマ同士がくくり加水の水でくっつき合っ
た状態で、内部は空気がたくさん入ったスカスカの状態です。これを練ることによって空気
を追い出して、そば粉と水がひと続きの状態にするのが菊ねりの工程です。

練るときはそば玉を手でくるむような感じになります。そば玉が小さいのでほとんど片手で
練ることができますが、最終段階で両手を使います(量が多いときは最初から両手で練ります)。
練りかたは、まずそば玉を向こう側(自分と反対側)から大きく握ります。指はそば玉の向こう
側、手のひらは上面にかかっている感じです。次に手のひらで、そば玉の右肩を手前に倒し、
そば玉を折り畳むような感じで手前中央に練り込みます。練り込んだらそば玉を左手で右に
15度ほど回転させ、再び玉の右肩を手前中央に練り込む。この作業をそば玉の表面がしっと
りしてくるまで繰り返します。大略30〜50回でしっとりしてくるでしょう。表面がしっとり
してきたら、手のひらとそば玉の接触面積を多くして、そば玉全体に圧力を与えながら同じ
作業を続けます。これを30回。慣れてくるとそば玉の手前の中央に菊の花びら状のくぼみが
できます。ここまででほとんどの空気が抜けます。最後に手のひら全体で玉をしっかり囲み、
粉全体に圧力がかかるようにギュっと加圧しながら、あと20回練ります。この加圧で水に溶
けたタンパク質がそば粉同士をしっかりとつないでくれます。うまくいくと玉全体がしっと
りし、表面に照りのような感じがでてきます。なお、しっとりしないで表面にヒビがはいった
場合は、加水を失敗していることになります。練るそばから周辺部が割れるのも加水の失敗。
次回はもっと手早くやるか、水を1%増やします(電子ばかりをつかっていない場合は、加水の
量が根本的に違っている恐れがあります)。もし玉がグニャっとしてゆるいようなら、加水の
しすぎです。これを「ずる玉」と呼びます。初心者が練習の過程で水分を多めにすることで玉
を作る事に成功することは悪いことではありません。でも手にくっつきやすいですし、次の
包丁作業も難しくなるので、だんだん水分を減らして適正な加水率の玉をつくれるようにし
てください。なお、固い…適正…ずる玉、の水分量の違いは、せいぜい±1〜2%です。3%多かった
らドロドロですし、3%少なかったら玉になりません。かなり微妙な加水の違いで結果が劇的
に変ります。そこが難しく、また面白いところです。

(ここまでで加水開始から8分弱)

★ 菊ねりのポイント

実は生粉打ちで一番難しいのが菊ねりです。web上で書いて説明する事はもちろんですが、
直接会って指導しても難しい。というのも、ほとんどの方が、この菊ねりで生地を「練って」
しまうからです。ギューっと変形させてしまう。ところがそれは、それは生粉打ちではやっ
てはいけない事なのです。生地を大きく変形させると、後で蕎麦切れの原因になってしまい
ます。生粉打ちの菊ねりは「加圧」がポイントとなります。加圧により生地のスキマを埋める
だけで、これがどうしてもわからないという方は、生地をそばの玉ではなくて、ご飯の固ま
りだと思ってください。つまり捏ね鉢の中にあるのが大きなおにぎりだと思うわけです。
さて、それがおにぎりだったとしたら、みなさん捏ねますか、捏ねませんよね。おにぎり捏ね
たら絶対に美味しくないです。だからひたすらギュ、ギュっと加圧するはずです。少し回し
て加圧する。回転させて場所を変えてまた加圧する。おにぎりですから球状ではないですね。
前後に薄いはずです。つまり偏平。それも菊ねりと同じ。生地の中央への練り込みですが、
これは、おにぎりの中央に梅干を押し込むんだという気持ちでやればうまく行くかもしれ
ません。ギュっと加圧しては梅干しを押し込む。回転させてまた加圧して押しこむ。さあ、
おにぎりだと思って固めてみましょう。菊ねりは練りではないんです。加圧です。


● へそだし

次はこの菊の花びらを閉じる作業です。花びらはいわば団子のキズですから、これをしっか
りと閉じないとあとでそばが切れます。やり方は、手のひらで花びらを上から抑え込みます。
押さえ込んでは手前に転がし、また押さえつけます。そうして菊の花の中心を玉の外に飛び
出させて行きます。同時に玉の左側をこね鉢の曲面にならわせて、頭を丸くしてゆきます
(こね鉢が大きくてそば粉の量が少ないと、左右両方が尖りますが、それでかまいません)。
花びらは最初割れていますが、突き出しては押しつぶし、また突き出しては押しつぶすよう
に10回転程度手前に転がすと、割れ目がつながってなくなってしまいます。この作業をへそ
だしといいます。へそがとびだしたら、そのへそを上にして((滴の形にこね鉢の上に置いて)
玉を上から押しつぶします。完成しました。きれいなそば玉の出来上がりです。
時間をおかずに直ちにのし工程に移ります(ここで絶対に寝かしてはいけません)。
さて、時間ですが、ここまでで加水開始から8分30秒〜9分です。初めてのみなさんはもう少し
かかるでしょうが、絶対に15分以上かけてはいけません。生粉打ちというのは時間との勝負
です。手順を何度も練習して、短時間の加水とくくりを心がけてください。10分を切ると、白樺
は本当においしい蕎麦になります。


● 地のし

のし板にそば玉を回転させながら手のひらで下に押して、あらかじめ大きな生地にする「地の
し」という作業をします。まずのし板の上にうち粉をまきます。ひとつまみをのし板に振りまき、
両手で延ばして広げます。延し板の上にまんべんなくまき、木の地肌がほぼ見えなくなればOK
ですが、最初のうちは多めでも結構です。うち粉をふったのし板にそば玉を置き手のひらで
押さえて丸く延ばしていきます。500gの玉で大人の拳3つ位に延ばします。200gで1つ半位で
しょう。


● 丸のし

地のしした生地をのし板の上で延ばして、四角い大きな生地にしていきます。この作業を
「のし」といいます。のしは細かくいうと4工程あります。まず「丸のし」で丸くして、次に「角
だし」で四角くして、次に「肉わけ」により厚いところをなくして、最後に「本のし(仕上げの
し)」で希望の大きさに仕上げます。ではどのくらいの大きさに延ばせばよいかですが、標準的
には、そば粉1グラムあたり7.5平方センチに延ばします。厚みが大略1.5〜1.6ミリとなります
ので、これを包丁で1.3〜1.4ミリ幅に切ったものが標準的なそばの断面形状となります(切り
幅のほうが狭い)。まず各グラムごとの延ばし面積の目標値を下記に書きますので把握して
ください。200グラムでは麺長優先の場合は30センチ×50センチに延ばすことになります。

★ 蕎麦の量に対し伸し広げる寸法は下記に下記に書きます。

  量     広さ    麺長優先
 100g  27cm×27cm  30cm×25cm 
 200g  38cm×38cm  30cm×50cm
 300g  47cm×47cm  60cm×38cm
 400g  55cm×55cm  60cm×50cm
 500g  61cm×61cm  60cm×62cm 


では丸のしです。まずのし板の上にうち粉をまきます。両手で延ばして広げます。最初のうちは
多めでも結構です。うち粉の上に生地を置いたら麺棒を中央にあてて、そっと下に押しながら
ゆっくりと丁寧に前後に転がして、生地を前後に広げます。最初、生地の中央が盛り上がってい
るうちは生地の中央から前後に押し広げる感じですが、生地の上面が平らになったら、麺棒を
端から1センチくらいのところにおろし、そこから反対の端まで転がして行きます。このとき、
押す方向は下向きです。押し広げるのではなくて、下に押して厚みを減らしながら転がすわけ
です。ただしいっぺんにたくさんつぶしてはいけません。一回に多くても2〜3ミリです。麺棒が
反対側(向こう側)にいったら転がすのをやめますが、とめる位置は反対の端から1センチ程度
のことろです。あまり端まで押すとつぶれて薄くなりすぎます。麺棒が他端に行ったら、麺棒を
手前にカラカラと転がしてきて、もう一度手前から向こうに押す操作を繰り返します。

次第に生地が楕円になり、前後が左右の1.4〜1.5倍程度になったら、玉を90度右に回転させて、
正円になるまで同じことをします。正円になったら45度回して同じことを繰り返し、生地を次第
に大きくします。途中で生地をひっくり返すか、打粉を生地の上に軽くまぶすと、生地に打粉が
コーティングされて、舌触りがよくなります。また、この作業中に生地の周辺部にヒビが入るこ
とがあります。生地が固い場合におこりますが、そのときは両手で生地の外側から押すように
して成形し、修復します。生地が丸くならずいびつになってしまったときも、この作業である
程度修正できます。これはのしが進んで薄くなると不可能ですが、直径15センチ程度までは
可能です。200グラムの場合、丸のしは直径が約20〜23センチで終了です。


● 角だし(つのだし)

次は四角くする作業です。
丸くなった生地にうち粉をふってから、麺棒に巻き付けます。巻き付けたら軽くし下に
押しつけながら向こう方向に転がします。このとき手は、生地の中央付近を両手をそろえて
(くっつけて)押します。のし板の向こうに達したら持ち上げて手前に持ってきて、また向
こうに転がします。のし板の上を3〜4回転がして延ばしたら、麺棒を右に90度廻します。
生地を広げます。麺棒にまかれた生地は中央部分がまき厚が上がっています。また両手で
中央を押していることもあり、このように中央が伸びるのです。生地はそのままにして、
麺棒を手前にまわし、生地を向こう方向に巻き付けます。巻き付けたら先程と同じように、
下に押しながら向こう方向に転がします。再び麺棒を右に90度回して生地を広げると、
生地は四角くなっています。もうかなり四角くなっていますので、これで終わりでもけっこう
ですが、あと二回同じことを行うとさらに四角くなります。もし一回転でこうならなかった
ら、もう二回転、または半回転させて四角くします。どこかひとつの頂点が出ていない時は、
麺棒にその頂点を少し巻いて、下に押しながら広げると、その頂点を延ばすことができます。
これで角だしが終わりました。角だしが終わって生地が四角くなった状態では、まだ全体が
均一でなくデコボコしている場合があります。また外形は真四角ではなくて、少し丸みが
残っていると思います。そこで、麺棒をこまめに転がして、生地の厚いところを薄いところ
に押し出して、厚みをできるだけ均一にします。この作業を「肉わけ」といいます。肉分けの時、
基本的に麺棒は生地の一辺と並行に転がします。すると比較的外にある生地が押し出されて、
丸みのあった生地がより四角くなると思います。縦横こまめに行い、平らで四角い生地に
します。


● 仕上げのしとたたみ

角だしがすんだ生地はまだ厚く、また若干デコボコしています。そこでこの生地をさらに
伸ばして、均一の厚みにします。私は現在生地を広げたまま延ばしていますが、なれないと
いびつな格好になるので、麺棒に巻きつけて延ばす方法をご紹介しましょう。まず再び生地を
麺棒に巻き付けます。角だしのときと違い、一辺と平行に巻き付けます。巻き付けたらのし板
に押しつけながら転がして、生地を伸ばします。麺棒の両端を持ってしたに押さえつけながら
ゆっくりと向こうへ押します。かなり横に伸びてきました。このあとさらに麺棒を生地の上を
転がして希望の面積まで延ばします。以上が仕上げ延しですが、ここで「最後に伸ばす方向」
に注意してください。最後の麺棒の方向と包丁の刃が平行になることが原則です。この麺棒の
方向に麺が切り出されるわけです。理由は、最後に伸ばした方向は生地がのばされることに
より切れやすくなっているので、それと直角方向に麺線をとるのがよいのです。次は「たたみ」
です。たたみは生地を半分に畳む作業です。なれると簡単ですが、最初はぴったり半分になら
ないものです。そこで生地の上下の辺の中央に目印をつけます。目印といっても、これはたたむ
ときの折り線の目安になります。次に、生地にうち粉をまきます。初心者は多めにまいてくだ
さい。そして麺棒を生地の左端から数センチのところにおき、生地を左から起こして麺棒の
上にかけます。かぶせた生地の上に手を添えて、そのまま生地を右に運び、生地の中央で折り
畳みます。先程生地の中央につけた目印が役に立ちます。次に右からも畳んで、生地を四重に
します。このたたみは手でやれば十分でしょう。これでたたみが終了です。200グラムまでは
このように横のたたみ二回ですが、300グラム以上では、一回目を横にたたんだあと、上下を
たたみ、麺長を30センチにします。もし500グラム以上で3回、または4回たたむ場合も、上下の
たたみを最後にします。なお200グラム打ちは、生地を30センチ×50センチと、かなり横長に
する必要があり、これが結構難しいといえます。このように包丁の刃渡りを超えてしまった
部分は、生地の上下をカットして包丁にかかる長さにします、カットした部分は無駄になり
ますが、油であげて塩をふると、おいしいそばクッキーができます。またカットした生地は麺
の端面がきれいでおいしそうだという利点もあり、お客様に出す場合は、意図的にカットする
こともあります。


● 切り

たたんだ生地を包丁で切り、麺にします。切り、または包丁と呼ばれる工程です。
まずまな板に生地より少し広め程度に打粉をまき、その上に畳んだ生地を乗せます。
まな板がない場合は、しかたないので延し板の上で切ります。
生地の上にもうち粉をまいてサラサラにします。これを忘れるとこま板が生地に吸いついて
動きが悪くなります。準備ができたら、生地の右端を少し残してこま板をかぶせます。
次に包丁を生地の右端に当て、そのまま静かにまな板におろします。次に三本の指を立てて
こま板におき、こま板の枕を押して右に滑らせて庖丁に当てます。次にこま板の枕から5センチ
程度離したところに左手を動かして、板面を軽く下に押します。三本指のほか中指と薬指も
第一関節を板にあてておきます。5本指を開いて、全部の指でこま板を押してもかまいませんが、
なるべく均等に押すようにします。

このほか切り幅を一定に保つコツは。

◎足をしっかり決めて腰を安定させて切る
◎脇をしっかり締める
◎庖丁を深くしっかり握る

庖丁はへそ(身体)の右10センチくらいの、ある狭い範囲でしか安定しません。したがって切る
につれて足腰をずらして、へそ(身体)を左に移動させます。しかしその移動範囲は10センチも
ないのです。そこで蕎麦を一人前切るごとに立ち位置を変えて、庖丁が安定する位置で作業を
します。そば切りは庖丁の柄を軸とした回転運動ですが、前後方向の動きにもコツがあります。
向こう方向に押しながら切るのがコツです。やわらかい生地でも少し押すと庖丁が安定します。
超粗挽きなどの硬い生地ではできる限り斜めに押して切るとよく切れます。ただしやわらかい
生地を極端に斜めに押すと、刃の移動距離が長いので麺線が縒れてしまうことがあります。そう
いう場合はほどほどにします。刃を斜めに押すと実質的に刃が鋭利になるので、切れ味がよくなり、
角のたった美味しい蕎麦ができます。つまり庖丁自体の切れ味も蕎麦の味を決めるわけですが、
切り方にも大切なノウハウがあるわけです。麺の太さは「きりべら23」が標準です。「きりべら」とは
生地の厚みより切り幅が狭いことをいいます。「23」は一寸3.03センチを23本に切ることです。1本
の切り幅が1.3ミリ程度になるわけです。生地の厚みがこの1.3ミリより厚ければ、きりべらとなり
ます(普通はそうなるように延ばします)。たとえば200グラムのそば粉を、この蕎麦打ちにしたが
って延ばして折り畳んだ生地は、幅が125ミリ程度。したがって約90回できれば切りべら23になり
ます。切った蕎麦は一人前ずつ容器に入れます。(通常そば粉100グラム分)を打ったら容器に移
します。切ったそばを持ち上げるには、包丁の先のテーパを使います。刃を向こう側に向けて切っ
た麺の下に差し込み、少し持ち上げて手にとります。軽く打粉を落としてから乾かないように
ポリ容器に入れます。一人前ずつごく軽くひねりを入れると、あとで一人前ずつ取り出すのが
楽です。すぐに茹でる場合はお盆やバットに並べてもかまいません。

※ ここまで約35分位で仕上げて下さい。手早く丁寧、相反する言葉ですが水廻しなどは
  兎に角手早くやれば美味しい蕎麦が打てます。 


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